日本の製本用具の機能性 Ⅱ

「バッケ板」と「筋玄能」

本は、中身の背を丸くすることで開きを良くし前小口側への迫り出しを防ぎます。丸背の本は丸みを付けた後に背を左右に叩いて「耳」を出します。この作業を英語で「バッキング」(backing)と言い、この時に本を挟む板がバッキングボード(板)です。

日本に洋式製本術が伝えられた時に、外国人技師が話す英語の「バッキング」が日本の製本職人には「バッケ」と聞こえたのではないでしょうか。そのためだと思いますが、日本では耳出しのことを「バッケ」(バッケ出し)、挟む板のことを「バッケ板」と呼んでいます。

ヨーロッパのバッキングボードやハンマーに比べて日本のものは使いやすいと思います。日本で考案された耳出し用のハンマー「筋玄能」(すじげんのう)は、叩く部分に「筋」(切込み)が入っていて、耳出し作業が的確に、かつ手早くできます。また、「バッケ板」は金属部分(背を挟む部分)が斜めになっていて耳部分が強く締められ滑り落ちることが有りません。

外国から伝わった製本用具が、日本の職人の工夫で日本独自に進化したものが少なくないようです。

(2019年6月)*写真/バッケ板と筋玄能

 

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