日本の製本用具の機能性Ⅴ

日本の製本用具の機能性V

「銀杏」(いちょう「銀杏ゴテ」) 

上製本(ハードカバー)の表紙をくるむ際に鋳物製のコテを使用しています。中身をくるんだ表紙の溝部分に加熱したコテを押し込み表紙と中身を接合します。銀杏の葉の形をしていることで「銀杏」という名称があり、溝付け作業のことを「銀杏を入れる」と言います。コテを加熱して押し当てることで早くしっかりと圧着できる作業性の良い道具です。

 ヨーロッパの伝統的な「綴じ付け製本」(パッセカルトン)は背綴じ紐を直接表紙のボード(カルトン)に綴じ付けるという作りですので「溝」がありません。大量出版の時代になって手間のかかる「綴じ付け製本」ではなく、中身と表紙を別々に拵える「くるみ製本」(ブラデル)が考案され、「溝」で接合する方法が取られました。

大量生産の製本の機械に「銀杏機械」があります。表紙をくるんだ本は、この機械の加熱された2枚の金属板で溝部分が押し込まれます。原理は手作業での銀杏ゴテと変わりません。この溝入れの機械がなぜ「銀杏機械」と呼ばれるのか不思議に思う人が多いかもしれませんが、手作業の溝入れが「銀杏」と呼ばれていたことから機械の溝入れ機にも「銀杏」という名称が残って「銀杏機械」となったようです。

機械の銀杏に対して手作業用の銀杏ゴテは「手銀杏」(ていちょう)と呼ばれることもあります。 「銀杏ゴテ」は便利な道具ですが、今では日本の製本職人の技術を受け継ぐ一部でしか使用されていません。

(2019年12月)*写真は「銀杏」による溝入れ作業


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